先日、生徒さんから「気功ってどこに送るんですか?」という質問を受けました。
普段、当たり前のように行っている気功の施術ですが、改めて「どこに気を送るのか」という点を深く考えたことはなかったのです。
実は、この質問に対する答えはとてもシンプル。「全部に送ります」。
今回は、その理由をさまざまな症状や原因の深さに基づいて詳しく解説していきます。
気功はどこに送るのか?【結論:全身】
「気功って、どこに送るんですか?」
こう聞かれて、最初はちょっと考えてしまいました。でも答えはシンプルです。全部に送ります。
なぜかというと、人の体と心は、そんなに単純じゃないからです。
肩こりがあるから肩にだけ送る?――もちろん一時的にはそれでも変化は出ます。でも本当に根本から変えたいなら、それでは足りません。
実際には、肩の不調の原因が腰の歪みだったり、内臓の疲れだったり、メンタルのストレスだったりすることが多いのです。
つまり、不調の場所と原因の場所がズレていることがほとんど。
体も心も、バラバラに存在しているわけではありません。全部がつながって動いている一つのシステムです。
だから私は、必ず「全身」に気を送ります。どこか一部分にだけ送って「効いたつもり」になっても意味がない。
本当の意味で元気になってほしいなら、全体のバランスを整える必要があります。
これが、初心者の方がまず身につけるべき気功の基本であり、気功の本質でもあります。
上級になれば、全体を整えたうえで「必要な部分に集中して送る」といった応用的な使い方も可能になりますが、気の送り方にズレがあるうちは、狙った効果が安定して出ません。
文字通り“空振り”になるので、最初は「全体に送る」ことを徹底した方が、結果的にうまくいくのです。
1 肩こりや首こりなど“浅い症状”への気功の送り方
肩こりや首こり、頭痛、軽いめまい、吐き気、腰の重だるさなどこうした不調は「浅い症状」と言えます。
つまり、筋肉や血流の滞りといった表層のトラブルが原因になっていることが多く、比較的シンプルに変化が出やすいのが特徴です。
このような症状は「加逆性が高い」とも言います。
加逆性とは、“体が元の正常な状態に戻りやすい性質”のことです。
たとえば、首や肩のコリも、ただ気を送るだけで「ふわっ」と筋肉がゆるみ、じんわり温かくなって血流が回りはじめるのを感じることがあります。
事実、私の施術では1回の気功で首の可動域が一気に広がることも珍しくありません。
こうした浅い不調は、ピンポイントでアプローチしても効果が出やすく、体感も早いのが特長です。
だからといって、肩こりなら肩だけ、という送り方では本質的ではありません。
なぜなら、そもそも肩がこる原因が姿勢や腰、ストレス、内臓疲労などにあることも多いからです。
一時的に楽にするだけなら部分的でも良いです。
でも、本当に再発させたくないならやはり全体に送る方が、改善の確率は上がります。
難病・進行性疾患など“不可逆”への気功の考え方
気功は、どんな不調にも万能――というわけではありません。
たとえば、難病や進行性の疾患、脳や神経の損傷といった「不可逆性の高い症状」に対しては、どうしても限界があります。
中枢神経や神経細胞など、再生の難しい部位に関しては、完全な回復を目指すのは現実的ではない場合もあるということです。
ただし、それで「何もできない」と言いたいわけではありません。
私は、こうした症状に対しても、気功が“できること”は確かにあると考えています。
たとえば、
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身体の緊張がゆるむことで痛みや不快感が軽減された
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気力や精神的な落ち込みが改善し、生活に前向きになれた
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ご家族との関係が穏やかになり、笑顔が増えた
こうした変化は、いわゆる医学的な“治療効果”とは違うものですが、「今この瞬間のQOL(生活の質)」を上げるという意味では非常に大切です。
私は、症状の深さや不可逆性の程度にかかわらず、その人が今より少しでも楽になれる可能性があるなら、気を送る意味はあると考えています。
それが、気功師としての私の経験から得た現在の答えです。
まとめ
「気功はどこに送るんですか?」
そう聞かれたとき、私は「全部に送ります」と答えます。
でも、それはあくまで初診や初心者向けの基本的な考え方です。
実際には、気功がわかってくると――送り方そのものが変わります。
意識の使い方など。
“どこにどう送るか”によって、出る効果が大きく変わってくるのです。
今回お伝えしたのは、あくまで入り口です。
気を感じられて出せるようになった方、まずは全体のバランスを整えることから始めるのが、安全で、効果的で、信頼できるやり方です。
そのうえで、状態や技術に応じて、必要な調整を加えていくのが、気功の正しい入り方だと思っています。
気功は、表層的な問題から深層的、あるいは不可逆的な問題まで、全体を整えることで効果を発揮します。
生徒さんの質問がきっかけで、改めて「なぜ気功を全体に送る必要があるのか」を考えることができました。
皆さんも、「全体を見る」という気功の魅力をぜひ体感してみてください。
最後まで読んでくださった方、ありがとうございます。
またよろしくお願いします。